女性にとっても男性にとっても、

セックスによるコミュニケーションは大切なこと。

でも、妊娠を計画していない場合は、避妊もとても重要です。

意図しない妊娠は、女性の心にも体にも大きな負担がかかります。相手任せにせず、きちんと避妊のことを考えてみましょう。

女性が主体的にできる避妊について、谷内先生に伺いました。

庄司産婦人科 谷内 麻子 先生 聖マリアンナ医科大学医学部卒。日本産科婦人科学会 専門医、日本女性医学学会認定医。専門は生殖内分 泌、周産期、更年期、女性のヘルスケア。両親、兄、夫と ともに「庄司産婦人科」に勤務。

たった一度のセックスが虐待死につながることも

何も避妊することなく性交渉を行って赤ちゃんを授かった場合、妊娠して280日後には出産を迎えます。でも、若くて経済的にも厳しい、パートナーがはっきりしないなどといった事情があると、子どもを産んで育てていくことは難しくなってしまいますね。
 実は虐待されて亡くなる子どもの年齢で、一番多いのは「0歳0カ月0日」なんです。計画していなかった妊娠によって赤ちゃんが生まれ、そのまま放置されたり、窒息させたりなどで命を止めてしまうというケースが非常に多いのです。そんな悲しいことを引き起こしてしまわないよう、避妊についてぜひ真剣に考えてください。
人工妊娠中絶という方法もありますが、手術ができる時期は限られていますし、女性の心身に大きな負担がかかります。自分の体を守るためにも、正しい避妊の知識を身につけましょう。

最も確実な避妊法は低用量ピル

日本ではコンドームによる避妊が主流ですが、確実性が低いため、それだけでの避妊はおすすめできません。また、相手がつけてくれないけど、空気を悪くしたくないから言えないという女性も多いです。でも、妊娠して大変な思いをするのは自分自身なのですから、きちんと伝えましょう。

女性が主体的にできる避妊法として一番おすすめなのは低用量ピルです。飲み忘れることなく服用していれば、ほぼ確実な避妊効果を得ることができます。また、「5月に結婚するから、それまでは避妊する」といったように、自分で期間を決めて服用することができるのもメリットです。

自分の行動の結果を想像しよう

もし今、妊娠・出産したら自分がどうなるか、イマジネーションを働かせてください。自分の行動に対する結果を日頃から考えることができていれば、避妊についても適切な行動がとれるのではないでしょうか。
 皆さんにはぜひ、海外の女性をお手本にしてほしいと思います。たとえば、フランスではピルがかなり普及しています。女性が「自分の体は自分で守る」というしっかりとした意志をもっているからです。
 日本では性教育、とくに避妊についての教育が足りていないと実感しています。男女関係なく、若いうちに、できれば子どもの頃から正しい知識・情報を得られるべきだと思いますし、私もそういった情報を皆さんにお伝えしていきたいと思います。

いろいろな避妊法

コンドーム

薬局やコンビニで手軽に購入でき、性感染症予防にも有効です。ただし途中で外れるなど失敗してしまうことも多いので、ほかの避妊法と併せて使用することをおすすめします。

低用量ピル

卵胞ホルモンと黄体ホルモンという女性ホルモンを人工的に合成した薬です。毎日同じ時間に服用することで、排卵を抑制します。95〜99%という高い避妊効果がありますが、医師の診断を受けて処方してもらう必要があるため、日本ではあまり普及していません。個人輸入やネット購入は偽造薬が紛れていることもあり危険なので、必ず婦人科で処方してもらいましょう。

ミレーナ®

ピルのもつ高い避妊効果とリングが合体した薬で、子宮にだけ薬が効きます。一度装着すれば最長で5年間効果が継続。近年、月経困難症の治療に対してミレーナ®が保険適用になりました。

緊急避妊薬

性暴力を受けた場合などや、避妊に失敗したと思われる場合に緊急手段として妊娠を防ぐ方法です。医師の指導のもと、性交後72時間以内になるべく早く服用します。

海外の女性用避妊器具いろいろ

海外には、女性が自分で自分の体に装着できる避妊具がたくさんあります。価格も無料、もしくは安価なのでとても手軽。女性が主体的に避妊に取り組める環境づくりが進んでいます。

避妊注射

避妊成功率94%。3カ月ごとに接種する。

避妊シール

避妊成功率91%。腹部や腕などに妊娠を防ぐホルモンの出るシールを貼るだけ。

避妊リング

避妊成功率91%。腟内に自分で挿入。約3週間効果が続く。

女性用コンドーム

避妊成功率82%。腟内に自分で挿入できるコンドーム。射精後に取り出す。

 

この記事は、学生のための健康生活マガジン『MY Jineko』に掲載されたものです。
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