大学生の「食」のギモンに お答えします!

最近は、朝食を抜く若い女性も多く、肥満よりもむしろ栄養不足、エネルギー不足が問題になっています。女性の体や健康に食事はどう関係しているのでしょう?また生理や妊娠に影響する可能性は?毎日を健やかに過ごすために、何を、どう食べればいいのか、管理栄養士の萱森有希さんに教えていただきました。

仙台ソレイユ生殖医療センターひだまりキッチン 管理栄養士 萱森 有希 さん 2007年東京家政大学卒業後、神田のベルギー郷土料理レストラン「Champ de Soleil」勤務。2011年より副料理長を務める。2016 年より「仙台ソレイユ母子クリニック」の管理栄養士に。調理師、国際薬膳師の資格ももつ。産婦人科医の村川晴生先生と共同監修のWEB&動画サイト「MAMADAYS(ママデイズ)」に掲載中のオリジナルレシピも人気。

朝食で1日のリズムを整えよう

 私たちの毎日の食事は、体内の細胞をつくる素になり、体をコントロールするホルモンをつくり出しています。特に月経リズムには女性ホルモンが大きくかかわっていますから、健やかでいるためには、まずは食事の摂り方を工夫して、体の調子をできるだけ自分で整えることが大切です。
 食事は3食しっかり食べるのが基本ですが、特に重視してほしいのが朝食です。朝食は1日の体温を上げるエネルギー源になり、血糖値のコントロールにも重要です。抜いてしまうと「冷え」につながり、女性ホルモンのバランスを崩す悪循環に陥ることも。朝食を摂る習慣がない人は、白湯やお水、温かい豆乳にハチミツを入れて飲むなど、できることから始めてみてください。

おすすめ食材は玄米と納豆

 体のためにはいろんな種類の食材を摂る必要があり、「これさえ食べれば大丈夫」なんていう食材はありませんが、1つの方法として主食の炭水化物を玄米に変えてみるのはおすすめです。最近は糖質を控える傾向がありますが、妊娠をはじめ生命活動に欠かせない栄養素です。特に玄米の胚芽やヌカ部分には、食物繊維、ビタミン、ミネラルが多く含まれていて、まさに天然のサプリメント! 食べ慣れないうちは「白米3対玄米1」の割合から始め、「おいしい」と感じられるバランスを見つけてください。そのほかに納豆などの発酵食品も栄養面に優れ、手軽に摂り入れやすい食材です。

楽しく食べて、心にも栄養を

 忙しい時は、スーパーやコンビニのお惣菜を利用するのもいいでしょう。選ぶ時は、たんぱく質と野菜が摂れるものを意識しましょう。ただ、便利な食品には添加物や化学調味料などが多く含まれていることがありますので、商品の原材料名をチェックして、自分の体に入るものをちゃんと知ったうえで、上手に利用してください。
 何より大切なのは、「食事は楽しくとる」ということ。買ってきたお惣菜をお気に入りのお皿に盛るだけでも気分が上がりますよね。メイクのアイテムや洋服をコーディネートするように、「この食材と何を組み合わせよう」と柔軟な発想で、自分の体のための料理を楽しんでみてくださいね。

大豆イソフラボンの摂りすぎは良くないですか?

大豆や豆乳、お豆腐といった食材そのものを食べる場合は、摂りすぎの心配はないと思います。ただ、栄養バランスの面で毎日同じものばかり食べるのは、おすすめできません。お豆腐は1/2丁、納豆は1パック程度が1日に摂りたい量の目安です。また、イソフラボンを凝縮した補助食品やサプリメントは食材とは異なります。摂りすぎに注意しましょう。

生理痛やPMSなどの症状は、食事で改善できますか?

生理痛の大敵は「冷え」。普段から体を温める食事で血流を良くし、適度な運動で筋肉量を上げることが症状の緩和につながります。生理痛やPMS の予兆を感じた時は、たんぱく質やビタミン、ミネラルを含む「無調整豆乳+甘酒+しょうが」のドリンクがおすすめ。心と体を癒してあげましょう。

生理の時、つい暴飲暴食してしまいます…。

大丈夫、異常ではありません。特に生理前というのは妊娠の準備期ですから、この時期は新しい生命を育むために、高カロリーのものが欲しくなります。暴飲暴食しそうになったら、ほうじ茶や豆乳など温かい飲み物で気持ちを落ち着かせた後、具だくさんのお味噌汁や野菜スープなどで栄養素と水分をしっかり摂りましょう。最後のごほうびにカカオ70% 以上のチョコレートを一片食べるなど、食欲をうまくコントロールしてくださいね。食べたくなったら体を動かすのも効果的です。ヨガやストレッチで股関節まわりを動かすと血流が良くなり、生理にもいい影響があります。

産婦人科では入院中どんな食事が出るんですか?

入院中の楽しみにしていただけるような献立や盛りつけを意識しています。産後の疲れや体の回復に必要なたんぱく質、野菜、穀物などをバランス良く組み合わせ、消化の負担ができるだけ軽くなるような素材選びや調理を心がけています。妊婦さんは、出産という大きなイベントを終えた直後も、授乳やおむつ交換など、毎日慣れないことの連続です。ですから食事の時に、気分が上がったり、ほっとしたりできるように思いを込めて作っています。

一人暮らしで野菜が摂りにくい時は、野菜ジュースでもいいですか?

野菜と同じ質と量の栄養素を摂ることは期待できませんが、まったく野菜を摂らないよりはずっといいです。できれば食塩や砂糖が無添加のものを選びましょう。糖質が少ないトマトジュースがおすすめです。

「DOHaD(※)」に興味があり、やせ型の女性と子どもの健康の関係などが気になります。

妊娠前の女性の体は、受精前から遺伝子に影響するといわれ、なかでもやせ型の女性は、体内のコレステロールが少なく、不妊になりやすいという報告もあります。またやせ型と肥満型、どちらも妊娠中や出産時のリスクが高くなります。お腹にいる赤ちゃんは、お母さんの栄養状態に多大な影響を受けるのです。当院では妊娠を希望する人に対し、BMI( 体格指数)を適正に保てるよう、サポートをしています。
※「Developmental Origins of Health and Disease」の略で「胎児の時の母体の健康や栄養状態が、成人になってからの健康に影響を及ぼす」という概念。

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