第7回 摂食障害を放置してはならない

思春期に多くみられる疾患に摂食障害があります。摂食障害には「拒食症」と「過食症」があり、拒食と過食を交互に繰り返すこともあります。

成長期にきちんと栄養を摂取しないと、ホルモンバランスが乱れて、正常な発育が阻害されます。拒食症は高じると死に至ることもあるので、摂食障害は決して軽視してはいけません。

1.拒食症

ダイエットが高じてほとんど食事をとらなくなることを「拒食症」といいます。拒食症は、「思春期食思不振症」ともいい、「好きな男の子からデブといわれた」「失恋したので、やせて見返したい」「モデルのような体型になりたい」など、ふとしたことから太ることに嫌悪感を覚え、異常な「やせ願望」を抱いて食事をとらなくなります。

 極端にやせて体脂肪が17%を切ると、ホルモンのバランスが崩れて無月経になることがあります。無月経を長期間放置すると、将来、妊娠することが困難になったり、エストロゲンの不足から更年期障害のような症状がみられるようになります。若年者でも精神が不安定になったり、骨がもろくなったりするので注意が必要です。

「やせれば、やせるせるほどいい」という異常なやせ願望が根底にあって、頑固に食事をとろうとせず、体重が極端に少なくなった場合には、「食べなさい」と叱るよりも、まず、歪んだ考え方を正す必要があるため、心療内科を受診した方がいいでしょう。

2.過食症

一方、旺盛な食欲をコントロールできなくなる病気が「過食症」です。過食後に、罪悪感から自分の喉に手を入れて、食べたものを吐こうとする行為を繰り返すこともあります。よくないとわかっていても異常な食欲を制御できない背景には、恋愛、受験、友だち関係、親子関係などに由来する精神的ストレスが潜んでいることが多いのです。

 大人でも「ストレスでドカ食い」をすることはありますが、ストレスのはけ口が食事にのみ向かっている場合には、原因となるストレスを取り除くために、カウンセリングを受けた方がいい場合もあります。

思春期の子どものメンタルはとても繊細です。拒食症にせよ、過食症にせよ、摂食障害の背後には、そこに至った何らかの動機や深層心理が潜んでいます。早めに医師に相談して、子どもの心情に寄り添った解決策を見つけていきましょう。

宮沢あゆみ(医師・ジャーナリスト)東京都出身。早稲田大学第一文学部卒TBSに入社し、報道局政治経済部初の女性記者として首相官邸、野党、国会、各省庁を担当。外信部へ移り国際情勢担当。バルセロナオリンピック特派員。この間、報道情報番組のディレクター、プロデューサーを兼務。その後、東海大医学部に学士編入学。New York Medical College、Mount Sinai Medical Center、Beth Israel Medical Center へ留学。三井記念病院、都立墨東病院勤務などを経て、「あゆみクリニック」を開業。講道館柔道2段。