第8回 ダイエットは要注意

前回の「第7回 摂食障害を放置してはならない」では、摂食障害と女性ホルモンの関係について解説しました。では実際に、拒食症の相談に来た母娘と医師のやりとりをみてみましょう。

<症例2>

絵里ちゃんは14歳の中学3年生。身長158cm、体重38㎏。

お母さんに連れられて来院した。初経が来たのは2年前。その後、多少の遅れはあっても月経は順調に来ていたが、半年前からパタリと止まってしまったという。

医師:半年前に、何か環境の変化がありましたか?

 

母親:好きな男の子から“デブ”と言われてショックを受けたらしく、ご飯を食べなくなってしまったんです。食べてもおかずだけで、炭水化物はほとんど口にしなくなってしまいました。その結果、体重は減ったのですが・・・。

 

医師:月経が止まってしまったのですね。過度のダイエットをして体脂肪が17%を切ると月経は止まってしまいます。予備力のない体で妊娠することのないよう、体が危険を回避するのです。

 

母親:ほら、絵里、だからきちんと食べなきゃだめって言ったでしょう。

 

絵里:だって、友だちはみんなモデルのようにやせているんだもん。私なんかまだまだ痩せ足りないの!(と泣き出す)

 

医師:絵里ちゃん、女性らしいふくよかな体型になるのは今しかないのよ。割り箸のような凹凸のない体より、メリハリのあるナイスバディ―の方がずっと魅力的だとは思わない?

 

絵里:・・・・・・・。

女性は月に3㎏以上落とすような極端なダイエットをすると、ホルモンバランスが乱れて月経不順になったり、無月経になってしまうことがあります。女性ホルモンであるエストロゲンは脂肪組織からも作り出されています。月経周期の維持には一定量の脂肪細胞が必要なのです。

ダイエットが原因でおきた無月経は、たとえ体重が元に戻っても、なかなか元に戻らないことが多く、その後の治療が非常に困難をきわめます。

思春期は体の土台ができる大事な時期です。女性らしいメリハリのある体型になる機会は、この時期をおいてないのです。思春期の安易なダイエットは高い代償がつくことを覚えておいていただきたいと思います。

宮沢あゆみ(医師・ジャーナリスト)東京都出身。早稲田大学第一文学部卒TBSに入社し、報道局政治経済部初の女性記者として首相官邸、野党、国会、各省庁を担当。外信部へ移り国際情勢担当。バルセロナオリンピック特派員。この間、報道情報番組のディレクター、プロデューサーを兼務。その後、東海大医学部に学士編入学。New York Medical College、Mount Sinai Medical Center、Beth Israel Medical Center へ留学。三井記念病院、都立墨東病院勤務などを経て、「あゆみクリニック」を開業。講道館柔道2段。