第10回 月経痛は我慢しないで診察を受けよう!

前回の「第9回 月経痛のメカニズム」では、痛みの原因とその対処法について解説しました。では実際に、月経痛の相談に来た母娘と医師のやりとりをみてみましょう。

<症例3>

彩香ちゃんは高校2年生。バレーボール部でセッターをしている活発な女の子だ。月経痛の悩みで母親と一緒に来院した。

彩香:小学6年生で月経が来てから、ずっと月経痛に苦しんでいます。最近では市販の鎮痛剤もあまり効かなくなって、痛い時は3~4時間おきに服用しています。部活も休み勝ちで、このままではレギュラーをはずされるかもしれないと不安で・・・。

医師:月経時には子宮が収縮して月経血を押し出そうとします。思春期の子宮は、発育が未熟で子宮の出口が狭いため、月経血が排出されにくく、子宮の収縮が下腹部に激しい痛みをもたらすのです。
母親:そういえば、私も10代の頃には月経痛がつらかった記憶があります。彩香を産んだあたりから、ずいぶんラクになりました。
医師:分娩を経験したことで、子宮の出口が広がり、月経血が排出されやすくなったからですね。陣痛はつらかったですか?
母親:そりゃもう、これまでに経験したことのない痛みでした。
医師:陣痛のミニバージョンが月経痛ですからね。陣痛を経験すると、月経痛など恐れるに足りなくなるようです。
母親:彩香の場合、何か病気が隠れている可能性はありませんか?
医師:だんだん月経痛が重くなってきて、月経時以外でも痛みが走ったり、排便痛などがある場合には、子宮内膜症という病気を疑います。
母親:どういう病気ですか?
医師:本来なら月経血として体外に排出されるはずの子宮内膜が、何らかの原因で腹腔内に散らばって、臓器と臓器をくっつけてしまい、子宮の動きが悪くなって痛みをもたらす病気です。
彩香:そういえば、芸能人が子宮内膜症の治療ために、しばらくタレント活動を休むというニュースを耳にしたことがあります。
医師:最近、子宮内膜症は若年者にも増えてきていますので、きちんと診察を受けて内膜症の可能性を除外しておく方がいいでしょう。綾香ちゃんは婦人科を受診するのは初めてですか?
彩香:はい、とても緊張しています。
医師:病気が隠れていないことを確認するためにも、子宮と卵巣の状態をきちんとチェックしましょうね。

月経痛のつらい記憶が残ると、月経そのものがストレスとなり、「またあの痛みがやってくる」と思っただけで憂うつになり、精神状態が悪化します。痛みを放置すれば不安が増して、肉体的にも精神的にも追い詰められていくからです。

月経痛は我慢せずに早めに診察を受けましょう。10代でも子宮内膜症など痛みの原因となる疾患がみつかることがあるからです。医師の診察を受けて異常がないことがわかれば、安心してそれだけで痛みが和らぐように感じる人も多いのです。一人で悩まずに気軽に相談していただきたいと思います。

2017/3/27 宮沢あゆみ(医師・ジャーナリスト)東京都出身。早稲田大学第一文学部卒TBSに入社し、報道局政治経済部初の女性記者として首相官邸、野党、国会、各省庁を担当。外信部へ移り国際情勢担当。バルセロナオリンピック特派員。この間、報道情報番組のディレクター、プロデューサーを兼務。その後、東海大医学部に学士編入学。New York Medical College、Mount Sinai Medical Center、Beth Israel Medical Center へ留学。三井記念病院、都立墨東病院勤務などを経て、「あゆみクリニック」を開業。講道館柔道2段。