毎月やってくる生理。出産するためにはないと困りますが、生理前のイライラや生理痛とあと数十年もつきあうと思うと憂鬱ですよね。それらの悩みを解決する方法の一つにピルがあります。生理にまつわるさまざまな悩みを解決してきた酒井淳先生に、ピルの上手な活用法を聞いてきました。

元町レディースクリニック 酒井 淳 先生 1985年慶應義塾大学医学部卒業。その後、大田原赤十字病院、平塚市民病院、慶應義塾大学病院などへ勤務した後、1991年米国国立衛生研究所(NIH)留学。帰国後、日本鋼管病院産婦人科上席医長を務める。2005年元町レディースクリニックを開業。

ピルは排卵を抑える効果のある薬です

ピルは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2種類の女性ホルモンを含んだ薬です。服用することで、この2つのホルモンが、赤ちゃんの元となる卵胞を成熟させるホルモンの分泌を抑えます。卵胞が大きく成熟しないために、排卵が起きなくなるしくみです。経口薬で、薬の種類によってずっと飲み続けるタイプと、生理の数日前にお休みをするタイプと2種類あります。

避妊はもちろん、生理不順や痛みの改善にも有効なピル

ピルの本来の目的は排卵を抑えて避妊すること。女性が自分自身の体を守るためにも、とても大切な役割です。そして、それだけでなく生理周期を整える、生理痛を軽減するなど、生理の不調を改善する効果もあります。生理周期が整うため経血量が適量になって貧血が減った、ニキビや多毛症が改善したという声もあります。

ピルは、大きく分けて2つあります。一つはOC(Oral Contraceptives)で、一般的に「低用量ピル」とよばれているもの。こちらは主に避妊目的で使われますが、生理の時期をずらしたいという目的の方にもおすすめです。

もう一つはLEP (Low doseEstrogen Progestin)です。月経前のイライラや、過多月経、月経困難症の治療を目的に作られた薬です。こちらは保険適用で処方されます。

どの薬剤を使うかは、患者さんの希望と体の状態をみながら決めていきます。

副作用も少なく、活用すればメリット大

OC、LEPともに飲み始めの頃は吐き気などの副作用が出ることがありますが、飲み続けるうちに体がピルのホルモンに慣れてくるので、落ち着いてくることが多いです。一つ注意しなければならないのが、血栓(血のかたまりができること)のリスクが上がること。もし飲み始めた後に、足が以前に比べてむくむようになったなどの症状がみられたら、速やかに医師に相談してください。

かつては「ピル」というと、副作用が強かったり、「奔放に遊んでいる」と思われるなど、良くないイメージをもたれることもありました。けれど現在は、少しずつですがピルの重要性が理解されるようになってきていますし、ピル自体も体への負担が少ないものに改良されています。服用することで生理のさまざまな悩みを改善できますので、悩んでいる人は一度、婦人科で相談してみてくださいね。

副作用

注意したいのが血栓。予防するために服用中は水分をしっかり摂り、こまめに足を動かすようにしましょう。ふくらはぎが激しく痛むなどの変わった症状がみられたら速やかに受診を。ピルの服用中は医師も血栓ができていないか定期的にチェックをします。そのほか、吐き気や体重の増加がみられることがありますが、一時的なものですぐに消失します。

購入の仕方

インターネットで安価に販売されている薬もありますが、どこで製造されたかわからないものも多く見受けられます。服用して万一、健康被害が出た場合は取り返しがつかないのと、責任所在が明らかでないので、絶対にやめましょう。必ず医師の診察を受けてから処方してもらいましょう。

服用の仕方

1日1錠、毎日決まった時間に服用します。ただし2時間程度の誤差であれば問題なし。「昨日飲み忘れた!」という場合は、気づいた時点で昨日分を服用。その後、当日分をいつもの時間に服用してください。飲み忘れを防ぐには、スマホのアラームを活用したり、歯ブラシの近くに薬を置くなど、自分の習慣とセットにするといいですよ。

費用の目安

OCは保険適用外で、1カ月の薬代は2500~3000円ほど。LEPは保険適用ですが、窓口で支払う金額は3000円程度。そのため、どちらの薬を選んだとしても自己負担額は同じくらいのようです。詳しい薬代は、医師もしくは薬剤師に確認をしましょう。