生理痛や生理不順はピルで解決!? でもピルは太るの?

生理痛や生理不順でピルを飲む女性が増えています。一方で、ピルを飲んで体重が増えたと耳にすることも多く、服用をためらう人もいるようです。ピルの疑問について、聖マリアビルクリニック院長の堺正長先生とメディカルエステ院長の堺玲子先生に伺いました。

婦人科ではピルは太らないといわれたけど本当?

 

現在、婦人科で生理痛や生理不順の治療で処方するピルは、低用量のピルが主流です。

結論を先に申し上げますと、ピルで太ることはありません。

臨床試験においても、ピルの服用と体重の増加に直接的な関係はないとされています。なぜ「太る」という声があるのでしょうか。

理由は、20年ほど前には低用量ピルの認可がまだおりず、ホルモン含有量が比較的多く、体への影響が強い中用量ピルか高用量が処方されていたため太る方がいたためのようです。
しかし、時代は変わりました。

現在主流となっている低用量ピルでは、ホルモン量が低めに抑えられているので、副作用の発生率もかなり低くなっています。

ただし低用量ピルであっても、ピルに含まれるエストロゲンのナトリウム貯留作用により水分の排出が抑えられて顔面や下腿にむくみ(浮腫)がみられたり、同じくピルに含まれるプロゲステロンによりインスリン分泌が増加するため、中性脂肪の合成が亢進して2㎏~3㎏体重が増加する方はいらっしゃいます。

ネットなどの書き込みを鵜呑みにするよりも、婦人科の医師に直接聞いて、安心感を得るのがおすすめです。

すでに服用経験があり、「ピルで太った」と感じている方には、いつもこんなアドバイスをしています。

生理前後はピルを服用されていても、されていなくても、食欲増進する方が多くいらっしゃいます。

ただ、食欲増進は必ずしも体重増加にはつながりません。

脂肪・糖分の取り過ぎに注意して、ストレスをためないようにしてください。

また、忙しい毎日の中で、なかなか趣味の時間が取れない女性は多いのですが、「そういえばけっこう食べているかも? 」と気づいた場合には、

ちょっとした時間でできる楽しみを見つけて、別の方法でストレスを発散することを心がけてみましょう。

ピルのメリットは?考えられるピルの副作用は?

ピルは女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンを含む合剤です。

この2つのホルモンが脳下垂体にはたらきかけて、卵巣の中にある卵子の入っている袋(卵胞)を熟成させるホルモンの分泌を止めます。

このため排卵が止まり避妊が可能になります。

販売されているピルには21錠タイプと28錠タイプがありますが、どちらも実薬が21錠であることには変わりはありません。

28錠タイプのピルは7錠の偽薬が付いていますが、偽薬は毎日服用する習慣をつけるために考えられたものです。

毎日きちんと飲めば、通常は偽薬を飲んでいる期間に、生理に似た出血があります。

ピルは避妊のほか、副効用(メリット)として生理不順の改善、生理痛の緩和や生理の時の出血量の軽減、子宮内膜症の予防と治療、PMS(月経前症候群)の症状改善、にきびや多毛症の改善、卵巣がんリスクの軽減などに有用であり、また仕事や旅行のスケジュールに合わせて生理予定日の調節をすることも可能です。

一方、低用量といってもピルも薬ですから、副作用はあります。

重篤な副作用は、静脈血栓症です。

海外の調査では低用量ピルを服用していない女性の静脈血栓症発症のリスクは年間10,000人あたり1~5人ですが、低用量ピル服用女性では3~9人と報告されていて、頻度としては低いと思います。

また喫煙、高年齢、肥満の方は低用量ピルによる静脈血栓症の発生のリスクが高いと考えられています。

低用量ピル服用による副作用の出現をチェックするため、3ケ月ごとの血圧及び体重測定、6ケ月~1年毎の血液検査が必要と思われます。

しかし、ネットでピルを購入して、10年以上、検査を一度もしないで飲み続ける方もいます。

医師の診断・処方なしで服用することは危険につながるのでやめましょう。

低容量ピルを内服してまもない頃、眠気や肌荒れを訴えられる方がいらっしゃいますが、たいてい3ケ月位で症状が落ちついてきます。

低用量ピルにはいくつかのタイプがあるので、その方に適したものを医師と一緒に見極めることをおすすめします。

ピル以外で、月経不順や月経痛を和らげる方法は?

当院では、生理不順、PMS、不妊、ピル処方などの対処療法では改善があまりされなかったかたや、根本的に治されたいかたには、ご希望があればカウセリングの上、その方のお体質に合った漢方、もしくは症状によっては針治療をご提案しています。

針治療は、脳を正常化してホルモンバランスをととのえ、ストレスなどで乱れた内臓機能を副作用なく修復してくれます。

ストレスは排卵を抑制して自立神経を乱し、機能性不妊、生理不順などの大きな原因となってもいます。

諸機能を正常化することで、むくみ、肥満、肌荒れなどにも効果が表れます。

ピルは即効性に優れていますが、鎮痛剤のように一時的に症状を抑えていることを踏まえて使用されるのがよいと思います。

いま20~30代の仕事をしている女性の多くは、仕事のし過ぎや強いストレスによってストレスや疲労が蓄積し、生理痛に苦しんでいます。

全身のコンディションが悪いままピルや漢方薬で痛みを抑えても、薬を止めるとまた痛みをくり返します。

卵巣や子宮だけでなく、弱った体全体を正常な状態に戻していき、その人自身がもともと持っていた体力を回復させることが最終的には必要になるでしょう。

●●●まとめ

「20~30年前と違って、女性も男性と同じ仕事をこなし、責任ある地位にもついています。その分、肉体と脳にはかなりストレスがかかっています。女性の体は子どもをつくる構造になっており、ストレスが色々な症状をうみだしています。その分ストレスケアが必要と考えます。(玲子先生)

堺正長先生(聖マリアビルクリニック院長)1976年、慶応義塾大学医学部卒業。同年、慶応義塾大学産婦人科学教室入局。その後、国立栃木病院を経て、国立埼玉病院産科医長を務める。1997年、介護老人保健施設長を経て、2015年、豊島区目白に聖マリアビルクリニックを開業。現在、聖母病院非常勤勤務、看護学校講師も務める
堺玲子先生メディカルエステ院長/中医師・鍼灸師・臨床心理カウンセラー・中国医師会会員元朝日カルチャーセンター講師。40年のキャリアを持ち、臨床心理も専門としている。心身両面からのアプローチを行い、マスコミにも数多く紹介されている。著名人やモデルにも支持され、信頼は厚い。